「マイクの違い」ってどこで感じるのか
こんにちは。Shuheyです。
マイクの違いって、実際どれくらい音が変わるんだろう?
そんな素朴な疑問を持ったことはありませんか。
今回は、僕が実際にAKG LYRA(USBマイク)とNeumann TLM102(XLRマイク)で
ボーカルとアコースティックギターをそれぞれ録音して、聴き比べてみました。
どちらも“歌ってみた”や“自宅録音”で人気のマイクですが、価格はおよそ5倍違います。
果たしてその差は、どんなふうに音に現れるのか。
この記事では「録音して聴いたリアルな違い」と「どんな人にどちらが向いているか」を、実際の音源とともにお話ししていきます。
比較する2つのマイクの特徴と価格


今回比較するのは、AKGの LYRA(ライラ) と、Neumannの TLM102(ティーエルエム)。
どちらも人気のコンデンサーマイクですが、立ち位置はまったく違います。
AKG LYRA — 手軽で明るく、最初から仕上がるUSBマイク
AKG LYRAは、パソコンに直接つなぐだけで録音できるUSBマイクです。
オーディオインターフェースも不要で、配信や歌ってみたの入門機としてとても人気があります。
価格はおよそ定価で2万円前後(時期によって変動あり)。
スペック面では24bit/192kHz対応と十分なクオリティ。
USBマイクの中でも音質は上位クラスで、
「録音に慣れていなくても安心して使える」という意味では、とても優秀なマイクです。
Neumann TLM102 — 原音をそのまま捉える、スタジオクラスの1本
Neumann(ノイマン)のTLM102は、レコーディング業界でも定番のXLRコンデンサーマイク。
価格はおよそ10万円前後と、LYRAの約5倍。
オーディオインターフェースを経由して使うタイプで、
より繊細で立体的な録音を求める人に向いています。
今回の録音にはオーディオインターフェースにMOTU M2を使用しました。
録音比較サンプル

実際にアコギのストロークとボーカルを録音して比較してみました。
LYRAとTLM102を横に並べて、ギターのサウンドホール正面を狙いました。
TLM102はオーディオインターフェースにMOTU M2を使用しています。
どちらも録音後、音量の調整以外は何のエフェクトもかけていません。
🎸 アコギ(ストローク)
AKG LYRA
TLM102 + MOTU M2
🎙 ボーカル
AKG LYRA
TLM102 + MOTU M2
比較する2つのマイクの特徴
ギター音声の波形の比較
こちらはPAZ Analyzer を使用した波形情報のスクリーンショットです。
LYRAとTLM102には周波数特性にも違いがあることがわかります。
LYRA AKG

TLM102

AKG LYRA — EQ済みの“完成された明るい音”
AKG LYRAは、いわゆる「USBコンデンサーマイク」に分類されるモデルです。
オーディオインターフェースがなくてもパソコンに直接つなげばすぐ録音できる手軽さが魅力。
このマイクの面白いところは、マイク内部で軽いEQ処理が施されている点です。
具体的には、125Hz付近からハイパスフィルターがかかっていて、
低域の「ボワッ」とした成分を抑えています。
さらに、125〜250Hzあたりの“モコッとこもる帯域”をカットし、
8〜16kHzの高域をブーストすることで、声の抜け感と明るさを際立たせているんです。
その結果、録音した段階ですでに“完成度が高く”感じられ、
ナレーションや「歌ってみた」など、加工なしでも聴きやすい音に仕上がります。
言い換えれば、LYRAは録ってすぐ使える音を目指したマイクだと言えます。
Neumann TLM102 — 原音をありのままに捉えるプロ用マイク
対してNeumann TLM102は、オーディオインターフェース経由で接続するXLRコンデンサーマイク。
プロの現場でもよく使われるモデルで、音の密度と解像感に定評があります。
TLM102は、見たところ60Hz付近から緩やかにハイパスフィルターがかかっている以外、
内部的なEQ処理はほとんど行われていません。
つまり「拾った音をそのまま収録する」マイク。
中域にはしっかりとした密度があり、
声の芯やギターの胴鳴りのような体温のある音がリアルに録れます。
そのぶん録音直後の音はやや地味に感じるかもしれませんが、
EQやコンプレッサーなどの後処理によって、
自分好みのクリアさや質感を追い込む余白がある音です。
この2本を比べると、
LYRAは「最初から聴きやすい完成された音」、
TLM102は「素材としてのポテンシャルが高い音」。
どちらが上というより、目的とスタイルの違いが明確に現れているのが面白い点です。
実際に聴いて感じた違い
実際に録音してみて、一番感じたのは「音の奥行き」と「抜け方」の違いでした。
スペックの数字よりも、耳がどう感じるかのほうがずっと大きい。
ボーカル
LYRAで録った声は、まっすぐで明るい。
マイクが少し前に出てくるような感覚で、声の輪郭がはっきりと浮かびます。
どこか“スタジオ的”というよりは、“放送的”な仕上がり。
そのままYouTubeや配信に使っても十分聴きやすい音です。
ただ、息の混ざり方や空気の動きは少し平面的。
言葉のニュアンスというよりは、メロディの形が際立つタイプの音。
“伝わる声”を録るには理想的ですが、“感じさせる声”には少し物足りないかもしれません。
一方、TLM102は第一印象こそ控えめですが、
聴けば聴くほど声の立体感が見えてきます。
息や口の開き方、声の奥にある空気の圧─
そうした小さな動きまで丁寧に拾ってくれる。
リバーブをかけると空間の奥行きが自然に出て、
まるで自分の声が“部屋に溶けていく”ような感覚になります。
アコースティックギター
ギターのストロークでは、LYRAのキャラクターがよりはっきり出ます。
アタックが軽やかで、ストロークの一音一音がシャキッと前に出る。
明るく乾いた音で、全体がまとまりやすく、
“すぐミックスに馴染む”バランスの取りやすいサウンドです。
TLM102は真逆の印象。
弦の震えやボディの響きが豊かで、
コードを弾いた瞬間の空気の厚みがそのまま残ります。
指板の位置やストロークの深さまで感じ取れるような、
“楽器の存在感”を録るマイクという印象です。
まとめるなら
LYRAは、録った瞬間に“完成”している音。
TLM102は、録ってから“育てる”音。
LYRAは速さと明るさで勝負できる即戦力。
TLM102は時間をかけて味が出る、表現者向けの道具。
どちらも素晴らしいマイクですが、
求める方向がまったく違うんですよね。
自分の音楽にどんな“空気”をまとわせたいかで、選ぶマイクも変わってくる。
どんな人にどちらが合う?
マイクを選ぶとき、「どっちがいいか」よりも
「自分がどんな録音をしたいか」で考えるとしっくりきます。
AKG LYRA が合う人
LYRAは、とにかく始めやすいマイクです。
パソコンにつなぐだけで録音できて、音もすぐに明るく仕上がる。
こんな人にぴったりです:
録った瞬間から“完成された音”になるので、
録音を「楽しむところから始めたい人」に最高の選択肢です。
Neumann TLM102 が合う人
TLM102は、音を自分で作り込みたい人に向いています。
録音した音がすでに整っているわけではありませんが、
その分、EQやリバーブで仕上げたときの伸びしろが大きい。
こんな人におすすめです:
TLM102は、録音というより“作品作りの道具”。
自分の音を“どう聴かせたいか”を考える時間が増えるマイクです。
💬 まとめるなら
| マイク名 | 特徴 | 向いているタイプ | 
|---|---|---|
| AKG LYRA | 明るく仕上がる、扱いやすいUSBマイク | 録音をすぐ始めたい人・配信・歌ってみた | 
| Neumann TLM102 | 原音重視の高解像度マイク | 音を作り込みたい人・制作志向のクリエイター | 
どちらが上、という話ではありません。
LYRAは「気軽に録音の楽しさを知るマイク」。
TLM102は「録音を自分の表現に変えるマイク」。
マイクを変えると、聴こえる世界が変わります。
だからこそ、自分が“どんな音を残したいか”を考えるのが一番の近道です。
まとめ — マイクを変えると、録音が変わる
同じ声でも、マイクを変えるとまったく違って聴こえます。
AKG LYRAは、録った瞬間から明るく仕上がる“完成された音”。
Neumann TLM102は、空気感まで拾う“育てる音”。
どちらが良いというより、どんな録音をしたいかで選び方が変わります。
気軽に始めたいならLYRA、じっくり作り込みたいならTLM102。
実際に録ってみると、
スペックの数字よりも「耳で感じる違い」のほうがずっと大きい。
マイクの前に立った瞬間、自分の音の世界が少し広がるはずです。
最後までご覧いただきありがとうございます。
マイク選びの一助になったら幸いです。
それでは次の記事でお会いしましょう!

  
  
  
  

    

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